この記事の3秒まとめ
- 頻度分析(9世紀):英語の「e」出現率13%を使い、換字暗号を体系的に解読する革命的手法
- ヴィジュネル暗号(16世紀):多表式換字で頻度の偏りを打ち消し、300年「解読不能」と呼ばれた暗号
- カシスキー試験(1863年):鍵の繰り返しパターンを見抜く手法でヴィジュネルを突破
- ワンタイムパッド:情報理論的に「完全秘密性」が証明された唯一の暗号方式
📊 頻度分析(9世紀):アル=キンディーの革命
9世紀のアラブの学者アル=キンディーが発見した革命的な解読法。どんな言語でも文字の出現頻度に偏りがあります。
- 英語:「e」が約13%と最多、次いで「t」約9%、「a」約8%…
- 日本語:「の」「は」「に」「を」「い」の順に出現頻度が高い
換字暗号では文字を置き換えても頻度の偏りが残るため、暗号文で最も多い文字が「e」に対応すると推測できます。この発見ですべての単純換字暗号が原理的に解読可能になりました。
🔸 ヴィジュネル暗号(16世紀):300年「解読不能」と呼ばれた多表式換字暗号
1553年に考案された多表式換字暗号。複数のシフト数を鍵語として使い、頻度の偏りを打ち消します。
鍵語:「KEY」(K=10, E=4, Y=24)
平文:HELLO WORLD
鍵 :KEYKE YKEYK(繰り返す)
暗号:RIJVS UYVJN(同じEでも異なる文字に)
「le chiffre indéchiffrable(解読不能の暗号)」と呼ばれ300年以上信頼されました。しかし1863年、プロイセンのカシスキーがカシスキー試験(繰り返しパターンから鍵長を特定する手法)を発見。鍵長がわかれば複数のシーザー暗号に分解でき、頻度分析で解読できます。
🔸 ワンタイムパッド(完全秘密性)
1882年にフランク・ミラーが考案し、1919年にバーナムが特許を取得したワンタイムパッド(One-Time Pad, OTP)は、情報理論的に「完全に安全な(解読不能な)」唯一の暗号方式です。
- メッセージと同じ長さの完全ランダムな鍵を使う
- 鍵はXOR演算でメッセージと結合する
- 鍵は一度しか使わない(使い捨て)
1949年にクロード・シャノンが数学的に「完全秘密性(Perfect Secrecy)」を証明しました。ただし「メッセージと同じ長さの鍵を事前共有する」という実用上の困難から、現在は外交・軍事の最高機密通信にのみ使われます。

「完璧だけど使いにくい」OTPの代わりに、「十分に安全かつ実用的」なAESが現代の主役になったんだよ🐾 実用性も安全性も、どちらも大事ってことね!
📌 暗号攻防史まとめ
| 時代 | 暗号 | 突破した解読手法 |
|---|---|---|
| 紀元前〜9世紀 | シーザー暗号など換字暗号 | 頻度分析(アル=キンディー) |
| 16世紀〜1863年 | ヴィジュネル暗号(多表式) | カシスキー試験+頻度分析 |
| 19世紀〜 | ワンタイムパッド | 解読不能(シャノンが1949年証明) |
ワンタイムパッドが「解読不能」と証明された理論(シャノンの情報理論)と同じ時代に、フェルマーの数論がRSA・ECCへつながる歴史を詳しく解説しています。
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